念願の一級建築士に~断固たる決意と根性!

 河本工業へ入社以来、如何にこれまでの経験が浅はかなものであったかを痛感しながらも、実務として本格的な設計業務に携わり、様々な事を学んでいく傍ら、営業としては即戦力。その自覚はありましたし、採用して頂いたからにはその期待に応えるべく結果を出さなくては、という責任も感じていました。実務を通して様々な新しい事を覚えながらもお客さんに恵まれ、1年目から忙しかったものです。

 そんななか、一級建築士への挑戦も再開します。本格的な設計業務に携わる事により、ハウスメーカーの一営業マンだった時よりも一級建築士への思いは強くなっていました。学科試験で玉砕はしたものの、前回の受験を通して一級建築士に合格したからといって何でも出来るようになるわけではないし、それで良い設計が出来るようになるわけでは無いという事には気づいていました。しかし「設計担当です」などど挨拶しておきながら、一級建築士でなかったら説得力が無いなと。営業マンは一級建築士でなくとも出来ますが、今後”設計”をやっていくために、一級建築士になる”必要がある”と強く感じ、いよいよ本気になったのでした。

 前回よりも固い、断固たる決意のもと、再度高い学費を払って専門学校への通学を再開します。毎週日曜日、学科の講義はお昼過ぎまででしたが、やがて学科試験に合格し、製図の実技試験の講義になると毎回9時~23時過ぎまで。更に翌週までにやらなくてはならない宿題が出ます。

 ここで葛藤したのが仕事とのバランス。企業相手とは違い、”住宅”のお客さんはいわゆるエンドユーザー、一個人です。そうなると、平日の昼間からじっくり打合せが出来るお客さんは少なく、どうしても土日や平日夜の打合せが多くなりがちなものです。しかし日曜は高い学費を払った学校へ行かなくてはなりません。今でこそ資格取得のために会社が全面協力する、といった風潮があるのかも知れませんが、私は良くも悪くも前述のように即戦力としての自覚と責任感により、そこに甘えるつもりは毛頭なし。「仕事でも結果を残しながら一級建築士に合格してやる」と。そのため、打合せが必要なお客さんには、「時間は何時になっても良いから平日夜か土曜で」となんとか都合をつけていただき、日曜だけは絶対に仕事を入れないようにしたのでした。その分、宿題は徹夜でこなす事もありました。でもそうして、毎週日曜の講義はすべて欠かさずに受講、宿題もすべてやり遂げました。

 それでも1年目は不合格―――半年間ずっと休み無しでやってきたのに不合格です。この時はまだ子どもはいませんでしたが、妻に”合わせる顔が無い”とは正にこの事・・・。社会人1年目で経験した「今は契約できない―――」と言われた時のような絶望感に苛まれましたが、そこは例によって”我慢強い”私。翌年もすべての講義、すべての宿題をこなし、ついに一級建築士に合格するのでした。まさに3度目の正直、31歳の時でした。

 この記事を目にされる人のなかに、これから一級建築士を目指す人がいるかどうかはわかりませんが、「一級建築士に合格するために必要なことは?」と聞かれれば、私は「断固たる決意と根性」だと即答します。振り返れば、営業マン時代、初めて一級建築士を受験した時は、この点において本気度が全く足りなかったのです。仕事を優先し、だから学校に行けない―――それはただの甘えでしかありません。原則として一級建築士という資格は、4年制の建築学科を卒業しても2年以上の実務経験が無いと受験できません(2019年現在)。つまり受験生はみんな社会人なのです。私は合格したので何とでも言えますが、一級建築士に限らず、仕事はしっかりやって責任を果たし、尚且つ必要な資格も取得する、それでこそ一人前の社会人だと思うのです。

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