その後~欠かすことの出来ない大切な経験値

「2年半後に独立する」と決めた当初の目標は、河本工業へ来て丸10年経過となる2019年4月の開業でしたが、様々な事情により最終的には2020年1月まで、9ヶ月ほどずれ込むことに。「自宅から見える現場」を終えてから1年以上の時間があったわけですが、その間、さらなる成長の機会に恵まれました。

一つは『方形屋根の家Ⅲ』としてもう一棟、自分のアイデンティティーが詰まった家を建てさせて頂けた事。営業~土地の売買契約に始まり、やはり設計~施工管理まで、すべて自分で担当させていただきました。もう一つは、数年前に自分が多大な影響を受けた物件で再び仕事が出来た事。数年前に母屋を建てた敷地内で、今度は”離れ”を建てるというもの。前回の母屋の時は営業と積算担当でしたが、今度は実施設計と施工管理まで担当させていただきました。この二つの物件を通して感じた事がいくつか、また大きな自信と大切な経験値を得る事が出来たのでした。

自宅から見える現場『方形屋根の家Ⅱ』同様、『Ⅲ』も自分で設計した建物です。ここでも新しい意匠を試す機会を頂き、自信を得る事ができたのですが、改めて感じたのは自分の設計した建物だからその建物に関する事はすべて自分の頭に入っているという事。だからこそ現場の施工管理も割とスムーズに進捗するのです。

河本工業での集大成『方形屋根の家Ⅲ』

 

一方、もう一つの物件、”離れ”の方は自分の設計ではありません。基本設計は母屋の設計を担当した坂本周建築工房さん。私は見積と実施設計から担当させていただいたのですが、ここで気づかされたのが”設計者の意図”の大切さと、施工者として”その意図を如何に反映させられるか”の大切さ。

見積をするにあたり、基本設計図を見た時に、”施工者”として最初に思ってしまったのが「納まらない」という事。自分も普段は設計を行っているだけに、「ここをこうすれば納まる」と、基本設計を変えようとしてしまったのです。しかしそれが後々問題に、そして大いに反省する事になりました。大切なのは、今回の設計者の意図=設計を任せたお客さんの意図・要望であるという事。設計者の意図である基本設計を変えることは、そのお客さんの意図・要望を変えてしまう事。お客さんが本当に求めているのは「こうすれば納まる」ではなく「なんとかして”コレ”を納めて欲しい」なのだという事。前述のように、自分で設計した建物を自分で施工する場合は、現場もスムーズでここまで深く考えることは無かったのです。

いろいろと苦労はありましたが、最終的には当初の基本設計通りの建物を完成させる事が出来ました。それまで施工管理の経験が少なかった私にとって、「これだけの建物を自分で施工する事が出来たんだ」という大きな自信を得る事ができました。同時に、今後私は”設計者”と”施工者”、どちらの立場にもなり得るし、両者を兼ねる事もあるはずです。”設計者”としては如何にお客さんの意図・要望を設計に反映し、”施工者”としてはその設計を如何に現場に反映できるか。当初の独立開業予定より延びてしまった期間ではありましたが、この期間に得られたものはとても大きく、今後独立してやっていくために欠かすことの出来ない大切な経験値となったのでした。

当初の設計通りに完成させる事ができた”離れ”。基本設計:坂本周建築工房

 

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