昨日のことですが講習会のため高崎へ。
私の中で、”講習”には3種類あります。
一つは、一級建築士や宅建の法定講習といった、定期的に ”受けなくてはならない” 講習。
もう一つは、省エネとか税金とか法律とか、「知りません」とは言えない情報を得るための ”受けておいた方が良い” 講習。
そしてもう一つは、個人的に興味のある ”受けたい” 講習。
昨日はとても興味深い、”受けたい” 講習なのでした。
内容は「パッシブデザイン」。
「パッシブ(passive)」とは、「受動態」とか「受動的な」とか、消極的で自分からは動かない、みたいな、どちらかというとネガティヴな印象の言葉ですが、パッシブデザインとは、個人的にはこれからもっと ”来る” のでは?と思っている設計手法の一つです。
とても簡単に言ってしまうと、自然の力、自然の恵みをうまく利用しましょうという設計。
例えばこの時期、日が当たる場所は暖かく、太陽の光はありがたい自然の恵みですよね。当たり前ですが、そのありがたい太陽の光はタダ(無料)なのです。そういった自然の力を最大限取り入れるための設計手法です。
「なんだ、太陽光発電か」と思われるかも知れませんがそうではありません。太陽光発電は「パッシブ」ではなく「アクティブ」デザインの部類です。
昨今「ZEH(ゼロエネルギーハウス)」が提唱されるなか、どうも個人的にはアクティブデザインには乗り気になれずにいたのです。「しょせん機械頼みか、機械が壊れたら終わりじゃん、建築ってなんなのさ」みたいな(あくまでも私観)。。
一方、パッシブデザインとは機械で快適性を生み出すのではなく、自然の恵みをそのまま建築的に利用して(時には遮断して)快適性を得ようとするもの。
自然から得られるタダ(無料)の熱や風や光を有効に活用しましょうというものです。
「そんなの当たり前じゃん」と思うし、建築に携わる人なら誰だって口にすると思います。実際、「軒を深くして夏の日射を遮断しましょう。でも冬は太陽が低いから、横から光が差してくるので室内に日射が取り込めます」とか、「だから冬の日射が取り入れられるように、南面の窓ガラスは日射遮蔽ではない物にしましょう」とか、その程度の事はこれまでに私も口にしてきたし、実践もしてきました。
でも、それ以上の事は?となると、それ以上の事は言いませんでした。”言わなかった”というより”言えなかった”というのが正直なところ。なぜなら具体的な根拠が示せなかったから。具体的な根拠が示せないのにそれ以上言っても説得力が無い、だから言えなかったのです。
今回の講習会では、一軒一軒千差万別の建設地、敷地に応じて、その具体的な根拠に基づいた設計を行うための手法を勉強してきました。
例えば”風”に関していうなら、その場所場所で吹く”卓越風”というものがあり、その季節ごとのデータが数値化されています↓
また”日射”に関していうなら、同じ北関東でも群馬県と栃木県と茨城県では日射量は異なるわけで、やはりその季節ごと、方位ごとのデータが数値化されているのです↓
それらのデータを元に、どのくらい自然の恵みを教授できるのかを計算して数値に表す演習なども行いました。
その中で、これまでは知る由もありませんでしたが、12月~2月の冬の時期、群馬県、特に前橋や館林は、南面でたくさんの日射量が得られる全国有数の場所であると昨日初めて知りました(全国1位は静岡の浜松あたりのようです)。
またその演習を通して、私にとっては衝撃の事実も発覚。
パッシブデザインにおいても ”断熱性” は大切な要素となります。これまで私は「費用は掛かるものの、サッシの性能や建物全体の断熱性は高ければ高いほど良い」と思っていましたが、こと ”群馬県において” パッシブデザインを考える際、サッシの性能や断熱性は高ければ高い方が良いワケではない、ある一定の数値(外皮平均熱貫流率UA値が)を超えると、かえって非効率であるという結果が数値で表れたのでした。
※あくまでも冬の時期にたくさんの日射量が得られる群馬県においてです。お隣でも長野県や新潟県では日射量が少なくなるのでこの限りではありません。
などなど、あっという間の4時間半。私としてはとても充実した大満足の講習会だったのでした。
いくらパッシブデザイン!と言っても、40度に迫る館林の夏をパッシブだけで乗り切るのは不可能ですし、機械に頼らざるを得ない、または頼った方が良い部分もあります。また、現時点では私自身、「パッシブデザインならお任せください!」と自信を持って言えるレベルにはありません。でもとても興味深い内容だし、今後、地域密着を謳う当社の軸となるコンセプトになるかも知れません。違った意味でも(建築的にも)地域に密着した住宅設計みたいな。数か月後には自信を持って「お任せください!」と言えるよう、更に勉強して理解を深めようと誓うのでした。
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