一級建築士への挑戦~館林最大手のゼネコン・河本工業株式会社へ

 特に明確な理由があったわけではありませんが、一応長男ですし「いずれは地元に帰らないとな」という思いを持ちながらも、当時の拠点は新しい展示場を任される形で異動したつくば・土浦方面。地域を統括する事業部内でも指折りの営業マンとして十分な収入を得る事ができ、結婚もして、この頃には独学で二級建築士と宅地建物取引主任者(現:宅地建物取引士)の資格を取得していました。

 そんな、一見順風満帆に見えた20代後半。今思えば本気度が全く足りなかったと振り返りますが、いよいよ一級建築士に挑戦します。中学生の頃から口にしていた一級建築士。合格率10%前後の超難関とも言われる国家資格です。

 独学ではまず不可能だと踏み、専門学校へ通い始めます。ところが、どうしても仕事を優先してしまう私。当時、火曜水曜が定休とは言え、その通りに休みなどろくに無し。特に契約が見えない月は休んでなんている場合ではない。すると数十万もの高い学費を払ったにもかかわらず、なかなか学校にも行けなく(行かなく)なってしまいます。行ったとしても、毎日帰りは深夜なので宿題など全く手が回らず、次第に講義の内容にも付いていけなくなります。そんな状態で受験はするものの当然の如く玉砕。学科の一次試験で不合格となりました。

 営業としてそれなりの地位を築いていたものの、この頃から「いつまで続けるんだろう」と考え始めます。結婚はしていましたが子どもはいませんでした。でも毎日帰りは深夜、休みもほとんど無い状態で幸せな家庭が築けるのか。毎月訪れる「契約が取れるのか取れないのか」というプレッシャーといつまで闘うのか、仮に支店長に出世したとしても、支店としてのそのプレッシャーは変わらないうえ、支店長になったらお客さんと直接のやり取りは無くなり、自分の好きなプランを描く作業も無くなる・・・また、このまま地元・館林から離れてどこへ行ってしまうのかも分からない。そして高い学費を払った学校にも満足に行けず(それは自分の責任でしたが)、そもそも一級建築士の夢、その先に何があるのか・・・。

 そんななか、とある筋のご縁で、地元・館林で最大手のゼネコン、河本工業株式会社との接点を得ます。名前を聞いた事はありましたが、館林のどこにある会社なのかも知らず、そもそも「ゼネコン?道路とか箱物建築には興味がない。自分がやりたいのは住宅で、しかも現場監督ではなく設計だ」、とあまり乗り気ではありませんでした。でも、その機会を与えてくださった方に失礼の無いよう、とりあえずは履歴書を送って面接へ。

 面接で待っていたのは、事前に何度か電話で話をしていた”半田”という人。電話で話す限り、野太い声でいかにも”現場の人”という感じの恐そうなおじさん(勝手なイメージ)。でも会ってもみると、拍子抜けするほど何とも気さくなおじさんで、しかも聞けば同級生のお父さん。すぐに気が楽になったのを覚えています。その半田さんが住宅事業部の部長、それと住宅事業部のNo.2と思しき山本さんという優しそうな課長(数年後には自分の直属の上司で良き理解者となってくれた)。それと人事を扱う総務課長、それと1年前に大手ハウスメーカーから河本工業へ来たという取締役。

 そこで色々な話を聞き、また、自分は一級建築士になって設計がやりたいという話も少し遠慮気味にしました。一応、面接を受けるからには失礼の無いよう河本工業の事は調べており、建築本部や土木本部という部署がメインであろう事は解っていたため、あまり”設計”と協調するのも場違いかな、と様子を伺いながら。実際にその場で、基本的には施工するのがメインで”設計部”というのは無いとも聞かされました。それでも私は、この半田さんと山本さんの二人がいる”住宅事業部”という部署に魅力を感じたのです。メインの建築本部や土木本部はほぼ施工のみという中、住宅事業部では設計から行っている、これまでハウスメーカーで私がやって来たように、お客さんと打合せをしてプランをつくり、さらに一歩進んで実施図面まで描いていると。入社してみると実際は少し違いましたが、「施工まで出来ないと務まらない」という旨の話も聞いた覚えがあります。当時、施工管理とか現場監督にはあまり興味が湧かなかったものの、「ここならこれまでの営業としての経験が活かせるうえ、更に本格的な設計に踏み込める」、また、聞けば大体みんな20時くらいには帰宅している、「これなら一級建築士の勉強も出来そう、そして地元・館林に帰って来られる」と、当初乗り気ではなかった面接でしたが、帰る時にはイメージが180度近く変わっていました。程なく、役員面接を経て無事内定。実は他にも転職活動をしていましたが、河本工業でお世話になる事を決めます。30歳になる年に、地元・館林へと帰ってくるのでした。

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